韓国LG電子の日本法人、LGエレクトロニクス・ジャパンは2011年6月15日、最新液晶テレビ2シリーズ5モデルを発表した。最薄部約8.8mmを実現した2D大型テレビ「NANO FULL LED(LZ9600)シリーズ」と、偏光方式の3D表示に対応する「CINEMA 3D(LW5700)シリーズ」だ。

LGエレクトロニクス・ジャパンが2011年6月15日に発表した3D対応液晶テレビ「CINEMA 3D(LW5700)シリーズ」。47/42/32V型の3モデルをラインアップする (画像クリックで拡大)

 国内の3Dテレビは、液晶が左右交互に開閉する「アクティブシャッターメガネ」を利用した「フレームシーケンシャル方式」が主流となっており、軽量の「偏光メガネ」を用いた偏光方式は東芝「REGZA ZP2シリーズ」に続いて最近では2例目となる(2008年にビックカメラが発売した韓国HYUNDAI IT製の3Dテレビ「E465S」も偏光方式を採用していた)。

 偏光方式の魅力とは何か、3D映像の画質はどうなのか。AV評論家の増田和夫氏が迫る。

ちらつきがなく傾きに強いのが偏光3D方式の魅力

 CINEMA 3Dシリーズの47V型モデル「47LW5700」は、3D画面の明るさが印象的だ。これは偏光方式を採用したメリットの1つである。偏光方式では両目に左右の映像が同時に届くため、3Dグラスをかけて見ても一般のテレビに近い輝度で視聴できる。偏光方式は原理的にフリッカー(ちらつき)が出ない点も見やすく、長時間見続けても疲れにくい。3D表現は初期設定だとややおとなしめで、遠近感がもう少し欲しいように思えた。だが書き割り感(遠近感が芝居セットのように数段階に圧縮されて見える現象)が少なく自然な印象だった。なお、遠近感や奥行き感は好みに応じて調整可能だ。

CINEMA 3Dシリーズの映像を視聴する増田和夫氏 (画像クリックで拡大)

 発色はビビッドで、アイドルPVやハリウッドCGアニメを鮮やかに描いていた。デモは明るいソースばかりだったので、映画的な黒の表現力は判定できなかったが、16分割のLEDエリア駆動を採用(42V型と47V型モデル)しているので、レンジの広いコントラスト表現もこなせそうだ。

現在主流のフレームシーケンシャル方式(写真左)との映像比較を実施していた。デモは明るく元気な絵柄で、これをシックな階調や色味のレベルに追い込めるかは未知数だ。しかし、後述するように詳細なイコライジング機能(画質と音質設定)を装備しているので、映像調整の自由度は確保されている (画像クリックで拡大)

 顔を傾けたり、テレビの端で寝そべって見ても3D映像が破綻しない。これもメガネとテレビが交信する必要のない偏光方式(円偏光)のメリットである。視野角の広いIPS液晶と相まって、ファミリーユースでスタイルを選ばない自由な3D視聴が楽しめそうだ。

テレビの横から顔を傾けて見ても、映像が破綻せずに3D映像を視聴できた (画像クリックで拡大)

 偏光方式の3Dメガネは、3D映画館でかけるメガネとほぼ同じシンプルな構造となっている。液晶シャッターや電源回路などが不要で、電源切れの心配やチャージする手間がかからない。軽量で装着しやすく、低価格(1000円から2000円程度で販売予定)で買い増しできる点も手軽だ。

偏光方式による解像度の低下は意外に気にならない

 偏光方式はその仕組み上、垂直解像度がフルハイビジョンの半分になってしまうのがデメリットと言われている。32V型では画面サイズからして、解像度の低下はそれほど気にならないだろうが、42V(42LW5700)、47V型(47LW5700)の大画面ではどうなのか。

 実際に視聴してみたところ、47V型でも解像度の低下は意外に気にならなかった。シャッター方式の3Dテレビと並べて比較すると解像度の違いが分るだろうが、両目に同時に映像が入ってくる自然さと、フリッカーレスの明るい画面のほうが好象的だった。多くの人にとって違和感を感じさせない、手軽な3D映像と言えるだろう。

 液晶は2倍速であるが、左右の画面切り替えをしない偏光方式であるため、速度的には必要かつ十分と言えそうだ。なお、黒帯のスキャン(バックライトの点滅による黒帯挿入)などの残像対策は採用していない。このためか、わずかに残像感が気になるシーンも散見された。

 このように細かい課題はあるものの、絵作りは数年前の製品と比べると大きく進歩していて、パネルと映像エンジンの進化が感じられる。数値上のコントラスト比をアピールしていた時代から、映像表現のステージに足を踏み入れたことが分かる画質だ。

 操作は同社らしく、目的別に画面下のアイコンを選んで操作するフレンドリーなGUIを採用している。操作画面のルック&フィールがMP3プレーヤー的で、もう少しシックなGUIが欲しい気もする。だが映像の詳細なイコライジングも可能で、好みの画質に追い込むことができるのはうれしい。

画面下部に表示されるCINEMA 3Dシリーズの操作メニュー (画像クリックで拡大)

設定メニューを進むと、かなり細かい映像調整もできる (画像クリックで拡大)

3D映像の左右が反転されている場合に切り替える機能や、3Dの立体感を20段階で調節する機能、3D視点(3D映像が交点を結ぶ「スクリーン」までの距離)を設定する機能も備えている。立体感を調整する機能は三菱電機の液晶テレビ「REALシリーズ」やBDレコーダー「REALブルーレイシリーズ」、パナソニックのBDレコーダー「ブルーレイDIGAシリーズ」にもあるが、ここまで細かく設定できるのはほかにはない特徴と言える (画像クリックで拡大)

価格次第では偏光3Dもアリだが……

 総じて見ると「値段次第では偏光方式もアリ」というのが感想だ。マニアックなAVファン向きではないが、リラックスして3Dが楽しめる点が魅力と言える。偏光方式のデメリット以上のメリットが感じられる製品で、手頃な価格で発売されたら、日本でも受け入れられる余地は大きいだろう。PC用の3Dディスプレイは偏光方式が主流になりつつあるため、PCユーザーにも支持されると思う。

 とはいえ、偏光方式の3Dや超薄型スタイル(同時発表の2Dモデル「NANO FULL LEDシリーズ」)が、国産テレビにない決定的な魅力になるかといえば、そこまでのオリジナリティーは感じられない。

 “ポスト3D”としてのLGテレビの本命は、来年登場が予想されるネット本格対応の「スマートテレビ」と言えそうだ。今回のモデルの主なネット機能は「アクトビラ ビデオ・フル」のみとシンプルに割り切られている。来年の「スマートテレビ」登場に向けてパワーをためているという印象だ。

 同社がグローバルに提唱する「スマートテレビ」はネットアプリ対応で、高度にインテリジェント化された新世代のネットテレビである。同社のスマートフォンとの連携も興味深い。リモコンに代わる新しい入力装置も期待される。TwitterやSkypeなどの汎用アプリ対応のほか、ローカライズとして日本専用のネットサービスが展開されれば、LGテレビならではの魅力になるだろう。

 国内の放送行政の行方にもよるが、携帯とPCが融合してスマートフォンが生まれたように、テレビとPCが合体する日は間近に迫っている。その先鞭を付けるのはソニーやパナソニックなどの日本メーカーか、それともLGテレビなのか。今後の展開に目が離せない。