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利用ユーザー8億人時代の中国携帯電話事情

 中国における携帯電話の利用者は、中国政府工業和信息化部(情報産業省)の発表によると2010年6月末の段階で、公称13億2000万人の60.5%にあたる8億535万人とされている。インターネット利用者数の4億人という数字にも驚かされたが、携帯電話に至っては8億人とさらに途方もない。しかも、まだ数億人が携帯電話を所有していない。ものすごいパイである。

 同部発の発表では各省での普及率についても触れている。100人あたりが持つ携帯電話の台数は、上海市では119.4台、北京市では114.4台であり、1人2台持つこともすこぶる珍しい状況でない地域もあれば、上海近郊への出稼ぎ労働者が多い安徽省で41.5台、西部の中心となる四川省で47台と普及率が50%を切る地区もある。ちなみにチベット自治区で48.9台、新疆ウイグル自治区で59.7台となっている。

 一方で同部が発表した固定電話に関する統計では、今年の上半期で876万7000人の利用者減となった。携帯電話の普及ゆえの減少だが、人口が多いだけに、減少人口の規模も半端ない。

大連の携帯電話市場 内陸の都市の駅付近に設置された携帯電話の広告
大連の携帯電話市場 内陸の都市の駅付近に設置された携帯電話の広告

 2008年に携帯電話の普及で公衆電話もより少なくなった。ろくに公衆電話がメンテナンスされなくなったという記事を2年前に掲載したが、今はそれ以上に無人の公衆電話を見ることがなくなったわけだ(一方で出稼ぎ労働者が集まるような場所は今も有人の公衆電話が活躍中だ)。

タッチパネルの携帯電話を弄る人 タッチパネルの携帯電話を弄る人

 これだけ携帯電話の利用台数があるということは、都市部を中心に多くの利用者が利用しているということであり、中国の都市の街角では、学生から老人まで様々な人々が携帯電話を弄っているのを見ることができる。

バス内では携帯電話を使っている人が少なくない

 もっとも中国では、日本ほど車内で徹底した静かさを求めないこともあり、車内では大きめの声で通話する人がいたり、スピーカーから流れる着メロの吟味を楽しむ人もいたりする。地下鉄車内は日本ほど携帯電話を弄る乗客ばかり、なんて感じではない。

 現在中国で人気の携帯電話端末は、もちろん各人それぞれが星の数ほどある端末から選ぶため、日本の「iPhone」並にどこでも特定の端末利用者がいるといえるほどの人気の機種はない。

最近ユーザーを多く見るNokiaのケータイ「E63」(左)と「E72i」(右)

 しかし「敢えて人気機種を」と問われれば、ノキアの「E63」や「E72i」などのフルキーボードモデルの利用者を、中国各地、西南地方から東北地方まで様々なところで見かける。人気のノキアブランドに加え、フルキーボード、おまけに値段はスマートフォンほど高くないというのが人気の理由だろう。

 また「中国においてスマートフォンといえばiPhoneか、それともAndroidか」なんて質問もよくされる。Android搭載スマートフォンは、様々なメーカーから様々なデザインのものがリリースされていて、所有したところで「その機種、話題の~だね」なんて憧れの眼差しを受けることはない。しかし、iPhoneならデザインはひとつなので、持てばそれなりのステータスを表現できる。したがって、上海のビジネス街と比較的ハイソな地域を走る地下鉄2号線には、東京の電車に乗ったかと錯覚するほどにiPhoneユーザーがわんさかいる。

 

ネット利用はチャットやテキスト閲覧がメイン

携帯電話の販売店では音楽や映像ファイルをダウンロードするサービスも提供する 携帯電話の販売店では音楽や映像ファイルをダウンロードするサービスも提供する

 携帯電話によるインターネットの利用者は、CNNIC(中国インターネット情報センター)によれば、2010年6月末の時点で2億7600万人が利用しているという。

 利用用途、つまり「携帯電話で何をするか」だが、これについてCNNICと中国のリサーチ会社のiResearchそれぞれが、最新の状況を発表している。母集団が違うのか、iResearchのほうが「チャット」や「検索」など各項目でCNNICより10ポイント以上高いという結果にはなっている。

 とはいえ、どちらのリサーチ結果も「チャット」が最も多くの人々に利用され、続いて両調査報告とも「情報の検索」「ネット小説などテキストファイルの閲読」「掲示板の利用」「オンラインゲームの利用」「動画サイトの利用」となっている。「ケータイで音楽をダウンロード」も人気がありそうだが、CNNICの調査結果では「人気アリ」、iResearchの結果は「人気ナシ」と結果が2分した。

 男女別ではPCによるインターネット利用者は男女比がほぼイコールであるのに対し、携帯電話では男性比率が非常に高い。最も人気のチャットの牽引役はやはり「QQ」(関連記事)だが、それでも携帯電話でのQQ利用者は男性が圧倒的だ。

 また年齢層でもPCとの違いが顕著で、中国のPCによるインターネット利用者は35歳以下だが、携帯電話によるインターネットの利用者は高校生あたりから社会人になりたてのフレッシュマンほどの年齢層に集中している。チャット同様、SNSや掲示板などテキストベースのサービスは、携帯電話とPCを両方使いこなす人はそこそこいる。

 筆者自身、中国各地東西南北様々な地域へ所用で行っているが、やはりどこへ行っても人々はテキストベースのコンテンツばかり携帯電話で利用しているのが目立つ。ただこれについては女性の利用者もしばしば確認している。

携帯電話でネット小説を読む人は最近よく見かけるようになった 携帯電話でネット小説を読む人は最近よく見かけるようになった

 特にネット小説などのテキストファイルを、電子ブックリーダーでは読まず、携帯電話で読む人は最近実に増えたと実感している。中国図書商報社と電子ブック配信サイト「読※網」(※は口へんに巴)が4月に発表した「2009-2010中国電子ブック発展レポート」によれば、電子ブック利用者は1億100万人となったが、電子ブックリーダーによるコンテンツ市場は700万元(9500万円弱)であるのに対し、携帯電話によるコンテンツ市場は5760万元(約7億7000万円)と非常にパイが大きい。

 ゲームにしても、オンラインゲーム全盛の中国において、それ以上にネットを使わないスタンドアロンのゲームが携帯電話では人気だ。つまり1回だけダウンロードして、本体に保存した上で遊ぶわけだ。つまるところ、速度が遅いこと(ないしは速度が遅いと認識されていること)がテキストベース以外のサービスの普及を阻害している。

 中国の若者はどのように思っているか。日々携帯電話でインターネットを利用する人は「小説やQQなどを利用するもよし、情報を検索するもよし。ただしやり過ぎると目に悪い」と基本的に勧めるスタンスではある。ただしPCのみでインターネットを利用する人は「速度が遅く、たいしたこともできずお勧めできない」と速度を理由に挙げ、触らず嫌いとなっている傾向がある。中国の流行を牽引する力は、ネット以上に口コミの力が強い。

中国移動(チャイナモバイル)のキャリアショップ 3Gをアピールするが、普及はまだまだ時間を要する
中国移動(チャイナモバイル)のキャリアショップ 3Gをアピールするが、普及はまだまだ時間を要する

 「ケータイでのネットは遅い」という概念を打ち破る3G携帯電話だが、中国のリサーチ会社「易観国際」(Analysys International)の発表によれば、今年上半期でWCDMA(中国聯通、チャイナユニコム)、CDMA 2000(中国電信、チャイナテレコム)、TD-SCDMA(中国移動、チャイナユニコム)の3規格・3キャリア合計で約1500万台が販売されたとのこと。とはいえ8億のケータイが使われている中での1500万台増は、まだまだ実生活の中では目に見えて3Gケータイユーザーが増えてきたとは言い難い。

通話料だけの本体無料ケータイが3Gでも続々登場 通話料だけの本体無料ケータイが3Gでも続々登場

 中国ではパケット定額制がないこともリッチコンテンツが敬遠される一因だろう。たとえば上海では、月額基本利用料が最も安い月66元(900円弱)でも、最も高い月586元(8000円弱)のプランでも定額ではなく、前者では300MB、後者では2GB以上利用するとそれ以上は1KBごとに0.004円加算という、半従量制である。

 ケータイでリッチコンテンツを楽しむ時代はまだまだ先ではなかろうか。





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